傷跡の追憶

私が通っていた中学校では、女子が好きな男子の名前をカッターで腕に彫る、というのが流行っていたんだけどこれって全国的なムーヴメントだったのだろうか。


要は、小学生が好きな子の名前をノートに緑色のペンで1000回書いたり机に彫ったりするおまじないの進化系というかエスカレートしたもので、片思い両思い関係なく学年の女子の半数、そして私の周囲の女子80%がこの自前タトゥー(墨は入れないけど)を彫っていたように記憶している。
ヤンキー系の女子から広まってたから多分、根性焼きみたいな感覚でもあったのだろうけど、体育祭の練習で袖をまくったほとんどの女子の上腕部に、いずれかの男子の名前が傷跡になって残っているのは同い年の私から見ても異常に感じた。


幼少より自己愛の強い私は当然そんなことをするわけがなかった。つーか痛いし。当時の私は好きな男子も月1ペースでコロコロ変わっていたので、いつ変わるとも知れない乙女の病の対象として誰かひとりを生贄にしても、冷めたときにその男子も私も気まずい思いをするに違いないということでやめておいた。


その後、彼女たちの思いが別の男子に移るのも目の当たりにすることになったのだが、そのときに彫り物をどうしたかまでは確認してないことに気づいた。まぁ高校入って「彼氏できたー」とか浮かれてる彼女たちに「中学のときの彫り物どうしたよ?」とか聞くのも野暮だしな。……でもそれが今になってやたらと気になってきたよ! そしてあれが地元の松戸だけだったのか、それとも全国でも似たような現象が起こっていたのか。


あと男子側の意見も聞きたい! 自分の名前を彫られて嬉しいものなんだろうか。ちょっとした「俺ってモテモテ」気分も、あの生々しい傷跡を見たら萎える気がするんだけど。