タラバス感想

ニコラウス・タラバスは若き思想犯で、野蛮な乱暴者で、ごくつぶしで、誇り高き軍人で、冷淡な差別主義者で、酔っ払いで、切れ者の指揮官で、敬虔なクリスチャンで、まじないの盲信者で、甘えん坊で、家なき子で、最後は放浪の旅に出て、死んだ。
無数の矛盾を抱える彼にとって戦争は故郷だったが、戦争は終わった。
実際の故郷である父親からも見放され、ニコラウス・タラバスはすべての故郷を失った。
寄りすがるものがなくなったとき、人は初めて、寄りすがるものを持たない人の心を知り、そしてそもそも自分には寄りすがるものなど初めからなかったことを知る。
君のまわりにあるものは、単に君のまわりにあっただけであって、君の何をもあらわしていない。本当は。