まとめに入ったら終わり

ある文章を読んで「おじさん、まとめに入ったら終わりなんだぜ」って思った。
成功してるひとは成功した時点で自分の軌跡を総括してみたりするわけだけど、それって実はかなり慎重にしなければならないんじゃないか。
40や50そこらで「○○○○全仕事」みたいな本にまとめちゃったり、「これから○○を目指す若者に…」とかさ。
まあ、実業家ならまだしもさ、芸術とか表現を仕事にしてるひとがそうゆうのを言い始めるとやばいと思う。いや、その時点でもういいやと思ってるならいいんだけど、基本的に芸術家って職業じゃなくて性(さが)であり生き方だから。まとめに入った時点で進化終わり、自分もう死んでます宣言してるよに思えちゃうんだよな。
やっぱ、芸術家に生まれたからには生に執着しまくって80そこらで「そろそろおれもまともな絵が描けるようになってきた」とかゆってた北斎みたいに、人生まるごとbetしたいよな。いや、おれ芸術家だよ? くだらない漫画ばかし描いてる上に単行本もマダガスカルだけど、いちお芸術家に生まれたつもり。
えっと、えっとさ、最近おれの好きな漫画家さんが死んだんだ。たぶんおしゃれさぶかるなひとたちは絶対知らない漫画家さんだけど。そのひとさ、漫画家以外に事業やってたらしくて家何軒も持ってたんだけど、それでも一本数ページの漫画を色んな雑誌に毎月毎月描いてたの。しかもね、そのひとの漫画、同じよなカットを尋常じゃなく使い回してて、コピー機壊れると仕事にならないの。あとひとつ取材したらそれを別の会社でも豪快に使い回すの。そのひとがいいか駄目かっつう話になったら確実に駄目だと思うのよ。でも、おれはそのひとの漫画好きだった。わけわかんない力があって。どんなに真似しても、あのひとの描くムチャクチャさにはかなわなかった。
つか、それが性ってもんだよなあ。漫画なんてたぶん、描かなくても困らないし、そもそもあんましちゃんと描いてない。でもあのひとはやめなかった。自分の成果をまとめようという風にも見えなかった。ただ無秩序に、「おれのノリ」みたいのを撒き散らしていってしまった。
ゆったらあのおっさんもそうだった。今年の春先に死んだおっさん。そのひともなんやまとまらないことをやってたひとで、最後に出した本まで「え、そんなんか」ていうノリで。おれはそのひとに会ったとき面と向かってありえないレベルの失礼なことゆってしまったんだけど、機嫌を悪くした感じもなくおれのけつとふとももをさりげにしこたま触っていた。たったそれだけだったのに、死んでしばらくしてから共通の編集者さんに「彼女をよろしく」なんて言ってたことを聞いて、それを思うと今でも泣きそうになる。
…話が寄り道したけど、まあそのおっさんもまとめなかった以上、芸術家だったんだろうなあ。
これだけ表現者が持ち上げられる時代に、そうゆう生き方をするのはなかなかしんどい。持ち上げられるのを拒否するってことでもあるから。でも、芸術家は持ち上げられて、自分をまとめに入ったら終わり。
だから、わかい芸術家のひとよ、おれたちより人気のある奴がまとめに入ったらニヤリとしろ。もうあいつはそれ以上伸びない。だめなおれたちだって、80くらいまでやってれば北斎の鼻くそくらいにはなれるのさ、きっと。