圧倒的な支配

こないだはバーはな藤井良樹デーにお邪魔して、藤井さんと犯罪の話で盛り上がっていた。
一家全員を精神支配して殺し合いをさせた北九州一家殺人の松永という男が気になって仕方ない。「中山ヒデちゃん似」と藤井さんがゆっていたが、残忍で粘着質で人の心を操るのに長けたその男を中山ヒデちゃんが演じたなら、間違いなく「静かなるドン」を超えるヒデちゃんの当たり役になるであろう。
つーわけで桐野夏生さんが小説化→映像化を激しく希望します。香田晋は不可の方向で!


…てゆうか松永すげー。ちょう悪人なのは分かってるんだけど。おれみたいな仕事してるとそれなりに極端な人に会うことが多くて、人の運命の浮沈とは純粋な「力」に左右されるなーと実感する。善悪なんてもの以上にね。で、女ってのはその「力」に敏感なんですよ。
ヤクザとかアウトローはモテるでしょ? それはそういうことで、女は自分の「力」と相手のそれを天秤にかけて、さらに相手の「力」と別の相手のそれを天秤にかけ、強い方へ惹き付けられるもの。その「力」が正だろうが負だろうが関係ない。
一方男はというと、自分より弱い相手の中から、比較的強い相手を選ぼうとする。できるだけいい女がいいけど、自分の手に負える程度の女じゃないと困るってゆう。


でも、実は「手に負える」女なんてそんなに存在しなくて、一時はそうだったとしても、ある時急に怪物に変貌を遂げたりする。そのことが、あらゆる悲劇とか喜劇の原点なんじゃないかな。
で、ですよ。怪物になった女は、爪を隠して弱い男を愛するか、自分より強い男を求めるしかないんですね。支配するかされるか。でも支配って面倒くさいから、支配されたいわけですよ本当は。


そこで松永という男は、非常に魅力的な男に映るわけです。顔は好みではないけど、その精神支配のうまさ、隷属した人間は、苦痛や絶望と引き換えに、至上の官能と恍惚を与えられただろうね。「また生き延びることができた」というその達成感は、普通に生きていたら決して与えられないものだから。