どくしょのあき

エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること (NT2X)

エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること (NT2X)

とりあえずざっと読んだよ。
なんといってもタイトルと表紙が素晴らしいですね。タイトルの横の「今、アダルトメディアに起こりつつあること」がなかったら「すわ、ネオ・エロ劇画か!」と勘違いしてジャケ買いする劇画ファンが多かったろうに(まぁ、だからサブタイトル付けたんだろうけど)!
「PART1−消え行くエロ本文化」では、安田氏がライターとして作り手側にいることもあってか、規制と需要のはざまで翻弄されながらも新たな一手を繰り出そうと腐心するエロ雑誌編集サイドの悲哀が色濃く感じられた。私は実話誌ブーム真っ只中にドサクサに紛れて潜り込んだクチなんだけど、そのあたりの記述で当時の空気感が脳裏に蘇って懐かしかった。
とはいえ単なる懐古趣味では決してなく、必ずDVDが付いてくる現状とか、雑誌でオナニーしない若者とか、エロメディアとしての雑誌の危機が、私にとっては結構切実な問題として胸に迫ってくる。また、こういった話は作り手側の事情ばかりの内輪話になりがちだけど、安田氏は受け手側の事情やエロ本を見る目というものをしっかり認識させてくれる。ちょっと引用させてもらうと「昔のエロ雑誌はサブカルチャー的な要素が強くて面白かった。と語られがちではあるが(中略)大半の読者はモノクロページは読んでいなかったのではないか。『面白い』と思っていたような読者が、エロ雑誌業界、あるいは出版業界に入ってくることが多かったため、そうした印象が作られていったのではないかという節がある」のあたりとか。もうホント、私なんかはこの文章を一日100回は復唱しなければいけないような気がするよ。大半の人は読んでないよ! た・い・は・ん・は! 私のバカ!!
「PART2−『進化』するアダルトビデオ」では、雨宮まみ氏がレンタルビデオセルビデオという大きな流れを柱に、その「進化」の過程を説明している。AVにあまり明るくない私でも分かりやすく、そしてAVを観てみようかという気にさせられる。さすがはAVライター! で、印象に残ったのはやっぱり「エロ」と「面白い」の話。その二つの要素の間で、エロな表現者はいつも苦悩があるのだなぁ。でも雨宮氏が「『何か得体の知れない面白そうなもの』を求めている人がいるように思える」のなら、まだまだ進化の余地を残した媒体と言えるんじゃないだろうか。受け手が減っていくばかりの業界にいる身としては、羨ましいの一言につきる。


そんな感じ! あと、エロ雑誌とかAVメーカーの変遷をチャート式みたいにするとより分かりやすかったかも!