よんだ

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

買って読んだ。
なんか帯に書いてる人がクオリアのひととかジュのひととか絶対音感のひととかばななのひととかで全員相当うさんくせえので、著者について予備知識がなかったら絶対手にとらなかっただろうけど、おれは幸い「ようこそ先輩」でこの著者を知り、信用するに足る印象を受けていたので買いました。ビバNHK、早く受信料取りにきてね。


で、読んでまず驚いたのは文章の美しさ。理系の人こそむしろ文学センスがあるというけれどまさにそんな感じ。言葉の選び方ひとつひとつが自分の感覚に忠実で、緻密だ。
そして科学的解説が延々書いてると思いきや、人間ドラマが満載である。科学研究者の生活、仕事ぶり、心の葛藤などの記述がおれにとっては新鮮だった。特にDNA二重らせん構造をX線照射によって実証したロザリンド女史のエピソードにはあやうく慟哭しそうになり、シャノアールで必死にこらえる羽目になった。
ただただ実直に地味な検証作業を繰り返し証拠を積み重ねる帰納的アプローチによって得られた貴重なデータが、他人のひらめきを立証するための道具として使われてしまう。しかも自分には何の見返りももたらされることはない。どころか、検証作業によって肉体を酷使した結果……。読んで欲しいから詳しいことは書かないけどもう、信じられないくらい救われない話!
とか、その他魅力的な研究者の話が豊かな表現とともにちりばめられて、また生物のミクロな分子構造や働き、その美しいまでの精密さが確かに記述されていて、ド文系のおれにはとても面白かった。
んでもまぁ、これが実際に科学的正確さをもって書かれてるのかとかそういうことはよく分からないので、そこらへん理系の人は話八分で聞いてくれたほうがいいのかもー。文系うさんくさ先生たちが諸手をあげて賞賛してるのはじっさい気味悪いし。うん。