リアルドラゴンボール

スポーツジムのスタジオに初めて参加してみた。「気功」というプログラム。
スタジオに入ると、中国風の音楽が流れる中おばちゃんたちが雑談中。
何をしていいか分からないので無難に柔軟体操などしていると、おばちゃんのひとりが声をかけてきた。
「あなた、初めての方?」
小柄で菅井きんにチョイ似の、ごく普通のおばちゃん。
ジム内の不倫の噂話などをこっそり教えてくれるかと思いきや
「結構キツい動きもあると思うけど、無理しないでね」
などと注意事項を話し出す。え、もしかしてもしかして、講師の方ですか!?
講師というとなんとなく「マツケンサンバ2」の振付師・真島茂樹さんのようなレオタードでスラーリナヨーリな男性を想像してしまうのだが(注:NHK教育おしゃれ工房」「趣味悠々」の見過ぎ)、そんなイメージを完全に覆す新しい講師っぷり。
この小柄で今にも「もっと食べなさい」と煮物を冷蔵庫から出してきそうな雰囲気のおばちゃんが、どう気功を教えてくれるのか、プログラムへの期待は高まるばかりだ。


そしていよいよプログラム開始。
中国風の音楽が相変わらず流れる中、生徒たちの前に立って動き始めるおばちゃん。
すごい。何がすごいって、60代のおばちゃんの動きではないのだ。
流れるようで、かつダイナミックな動き。素人の私にも「気の流れ」が見えるような動作を、実にリラックスし肩の力を抜いてやってのけているのだ。このおばちゃんは只者ではない。
もし地球にサイヤ人が来てスカウターでおばちゃんの戦闘能力を計測したら、多分かなりの能力値が算出されサイヤ人も一目置くことになるだろう。


ていうかよく見たら周りの生徒(おばあちゃん含む)もすごい。講師のおばちゃんほどではないが、しっかりと気を練って動いているのが分かる。このおばあちゃんたちの戦闘能力も侮れない。
……もしかしたら、彼女たちは相当な武力集団となり得るのではなかろうか。呼吸や血流、重心を自在に操ることができれば実際かなりのエネルギーが出せるということだし、そうなればそこらのおれおれ詐欺の若者や暴力息子、虐待ヘルパーなどでは到底かなわないだろう。高齢化社会を迎えるにあたってますますお年寄りを狙った犯罪が横行する世の中、気功を使って諸悪と戦う武力を身につけるというのは実に理にかなっているではないか。


しかし、講師のおばちゃんの本当の目的はそんなところにはない。高齢化によって増えたお年寄りを気功によって強化し、またこのスタジオプログラムを通してお年寄りの支持を掌握することで世界最大規模の武力集団の首領として君臨しようというのが彼女の目論見なのだ。
彼女らにはどのような武器、兵器も通用しない。気を制するものの前ではミサイルさえも進路を変え、撃った者へ跳ね返されるという。彼女たちに対抗するための唯一の武力は、気。
気の力で世界を手中に収めようとする彼女たちを制圧するべく、私は立ち上がった。なんとしてでも彼女から気を操る方法を習得し、世界の脅威となる前に彼女を打ち倒さねばならないのである。


……という妄想をしていたらプログラムの1時間があっという間に過ぎたよ! 楽しい!!