落ち目の有名人

この間、夜中に近所の商店街を歩いていると和泉元彌がいた。「がいた」というのはあまり正確ではないかもしれない。彼は白い高級車を、あたりをキョロキョロうかがいながら運転していた。肩くらいの髪を後ろで束ね、ラフなTシャツ姿でハンドルを握る彼から紅白司会をつとめた頃の自信は窺えず、その整った顔立ちが焦りや怯えのような表情をより際だたせているように感じた。
どうせ見るなら人気絶頂のころに見たかったという思いもあるが、あれだけトラブルを起こしてもやはり伝統芸能界のプリンス。お肌の綺麗さはフロントガラス越しにもじゅうぶん伝わった。
この事実自体は大して重要ではないが、よく考えると重大な仮定をはらんでいることに気づいた。
つまり、芸能人も人気が落ちれば間近で目撃するチャンスが増えるかもしれないということだ。いくら以前は有名だったとはいえ落ちてしまえば一般人だ。飯も食うしくそもする。有名だったのも昔の話なら、そうそう人目を気にするわけにもいかないだろう。

そうだ、そうなればおれでも松山ケンイチくんを見るだけでなくあわよくばおち(略

そういうわけでおれは松山くんがさっさと落ち目になることを願わずにはいられないのであった。